本日のWSJに”The Next Big Bailout Decision: Insurers”と言う記事が一面に載っています。多くの生命保険会社が政府のTARPの(救済の貸し付け)申請を行っており、業界は数週間以内に政府から本要請に対する返答をもらう見込みであるとの事です。非常に良い記事なので、是非添付のリンクから読んでみて下さい。以下に一部要約と私のコメントを記します。
- 生命保険会社の株価はここ数週間で大幅に下落してきている。インデックスは今年の頭から比べて59%下落、2007年5月からは82%の下落となっている。
- 大きな打撃(下落)を被っているいくつかの会社は100年(以上)の歴史を持つ名のしれた会社で、何百万人の生命保険を取り扱っている。
- 生命保険会社の中でも、勝ち組、負け組の差が大きくなっている。
- 一部の州では、保険の資本基準を緩める等して(救済して)いるが、ここ数ヶ月の間に行われた政府による銀行に対する資本投入の様な救済は保険会社に対しては行われていない。なぜなら、生命保険会社は、リスクの高い資本投資を行なっていないし、長期投資家として、彼らは一般的に所有する資産の価値を短期的な下落によって、(評価損失)を計上する必要がないからである。
- レーティング・エージェンシーや株投資家は、後どれくらいの間、業界が大きな打撃を被っている資産を彼らの帳簿上に反映しないでいられるか、不安を高めている。ここ数週間で、Moody’s Investors Service, Standard & Poor’s, そしてA.M. Bestは1ダース以上の企業のレーティングを引下げている。
- 生命保険会社(の財政面で)の弱体化による景気全般への影響は大きい。生命保険会社は、国内の企業債券の最大の保有者である。American Council of Life Insurersによると業界全体を合わせると、全ての企業債券の貸し付け残高の18%を保有しているとのこと。
- もしも、生命保険会社が債券を買う事を止めた場合、資本市場が完全に回復する事はできないのでは、と業界の代表とアナリストは語っている。
- 既に、彼らの購買動向は停滞している。ACLIの調査によると、2008年第4四半期に、生命保険会社は、33億ドルの株式と債券を購入したが、それは前四半期に比べて63%の下落したものだった。
- 生命保険会社の弱体・不安の兆候は、消費者のコンフィデンスを更に削ぐことになり、保険商品を購入する事に躊躇する事になるだろう、と業界関係者は語っている。
- レーティング会社、ウォールストリートのアナリストは、いくつかの生命保険会社のもう一つの問題は退職後の収入を提供する商品、年金保険の支払いであると述べている。保険会社は、基準を満たすため追加の資金を確保して置いておかなければならず、予備の資本(蓄え)を更に減らす事になってきている。
- 業界はいくつかの好材料もある。生命保険は、彼らの契約から得られる保険金により継続して現金を得られること。投資銀行や他の金融企業とは異なり、生命保険会社は日々の業務に投資するために、定期的に現金を調達する必要がない。
- 現時点では、財務省は生命保険会社はTARPの対象資格があるか否かについて語っていない。業界団体のACLIは、財務省は、今月の末頃までに救済の対象資格があるかどうかについて判断する見込みとしている。
- 財務省は(この件についての)取材の電話に応じていない。
- 生命保険会社が被っている問題は、1730 億ドルの救済パッケージを受けとっている保険会社大手AIGの抱えている問題と同じではない。AIGの損失は、デリバティブ、特にCDSに関連したものだ。
- 生命保険会社の苦境は、主に投資グレードの社債、業務用不動産(Commercial real estate)、ローン等である。多くの生命保険会社は、2008年、高額の損失となったが、企業会計のルールにより彼らはさらに低い金額での記載を要求されていない。国内の最大手の生命保険会社MetLifeは、3808億ドルの資産を一般会計で保有しているが、2008年末の時点で298億ドルの含み損失を抱えている。
これ以降、もう少し話は続きますが、ご興味のある方は、是非、原文をご覧になって下さい。非常に良くまとまった、良い記事だと思います。
参考記事:
The Next Big Bailout Decision: Insurers
The Wall Street Journal, March 12, 2009 A1, A2
ご存知の通り、政府はAIG, ファイナンス企業, Freddie Mac, Fannie Mae, そして自動車企業等に救済措置を取ってきていますが、更に生命保険会社までが救済を求めることになるとは、まさにいたちごっこの様な状況に思えます。米政府も様々な対応をしておりますが、次から次へと噴出する問題や救済要求の全てに対処、要求を完全に満たす事は現実としてはできないと思います。ウォーレン・バフェット氏は、先月末に公開したBerkshire Hathawayの株主向けのレターの中で、「政府(財務省)とFedの状態は、ポーカー用語で言うところの”all in”だ」と語っています。かなりうまい喩えだと思います。尚、本ブログの関連ブログ“ウォーレン・バフェット ウォッチ”の方で、バフェット氏のバークシャー株主向けの手紙の邦訳のエントリーを行っております。以下、上記引用の該当箇所の翻訳した部分を記載します。
(以下ウォーレン・バフェット ウォッチから)
第4四半期までに、クレジット危機は、住宅と株式の急激な下落と共に国を麻痺させる恐怖に巻き込みました。その結果、ビジネス活動の急激な低下を引き起こし、そして、私が今までに目撃した事がない様なペースで加速しています。米国、そして世界のほとんどが、危険なnegative-feedback cycle(否定的な・負のフィードバック・サイクル)の罠に嵌ってしまいました。恐怖はビジネス・事業活動の低下を招き、そしてそれは、更に大きな恐怖を引き起こす事となっています。
この弱体化のスパイラルは、我々の政府に大規模な行動を取る事を駆り立てています。ポーカーの用語で言うと、財務省とFedは"all in”になっています。(注:ポーカーのall in”は、場の掛け金に対して手持ち資金が満たない場合でも賭けを継続する時に宣言すること、の様です。バフェットさんらしい、うまい言い回し、喩えだと思います。Wikipediaの説明)
引用:バフェットからの手紙 - 2008年版
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