AIGのボーナス支給が明らかになった後から、国民や議員の間で本件に対して、非常に強い怒りがわき起こりました。そして、先週、上院は、支給したボーナスを取り返す、また、政府から巨額の救済を得ている企業が今後似た様な形でボーナスを支給しない様にするため、ボーナスに対する課税案を賛成多数で可決しました。
(関連エントリー:3月19日の米国市場からの抜粋)
政府から巨額の救済資金を得ているAIGが1億6500万ドルのボーナスを先週末に支払った事について、大きな話題となっていましたが、米下院が、政府の救済措置を得ている企業において、巨額のボーナスを得た社員に対して、制裁的な課税措置を取る提案を賛成多数で可決しました。この提案は、50億ドル以上の政府から救済資金を得ている企業において、収入が25万ドル以上の社員(一般的に幹部社員)に対して支給されるボーナスに対して90%の税率を適用するものです。この案に対しては、共和党は反対の姿勢を取っていますが、一部の共和党社員も賛成に動き、賛成多数となっています。尚、上院では別の案が検討されているので、まだ、多少紆余曲折がある可能性も残っています。
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(引用終わり)
また、下院でも同様の主旨で手法は若干異なるものの、結果的には支払った税金を取り返す課税案が検討されていました。本日のWSJの一面に”Drive to Tax AIG Bonuses Slows”と言うタイトルの記事が掲載されています。この記事は、先日から大きな話題となっているAIGの巨額のボーナス支給に対して、高額の税率を適用して支払われたボーナスを回収する議会の動きが急速に衰えてきている事を、報道しています。
以下、WSJの記事の概要を要約したものを記します。
先週、上院で可決された政府から巨額の救済援助を受けている企業においてボーナスに対して90%の課税を行う案を、法制化するために下院で審議するのは、4月2日から始まる2週間の休みの前には行われないことは確かであると見られている。また、大統領側が今後その様な支払いを行わない様に監督すると確約した場合、両院とも法制化に向けた動きを引下げることもあり得る。
急速に動きが収まってきている背景としては、上院の予算案に対してオバマ大統領が冷ややかな姿勢を示した事、下院の共和党のリーダーが懸念を示した事、多くのAIGの経営陣がボーナスを返還した事などである。また、それ以外にも、オバマ政権がファイナンス企業経営陣への給与条件を含む金融市場に対する監督の強化の動きがあり、それによって本件をカバーできる可能性があるためである。
中略
上院の多数陣営民主党のリーダーのSteny Hoyerは、先週の上院の過激な動きから一歩下がり、ボーナス課税の法定化はAIGのボーナスが返済されてきている今は「必要ないかもしれない」と提言した。(中略:この後、Hoyer氏は上記の様に語ったものの、上院で可決した案を取り巻く動きに対しては弁護しており、立場を反転しているわけではない。と言った様な話が続きます。)
上院の民主党議員リーダーのHarry Reid氏は、「問題は解決した訳ではない」と昨日語ったものの、緊急度を要するものではなく、数日間待ったとしても問題はなく、時間がある時に行えば良いと考えている、と述べた。また、Reid氏のスポークスマンのJim Manley氏が、オバマ大統領と上院の共和党から懸念が示されているため、一歩離れて、次のステップの可能性について議論する事を決めたと語った。
(話はまだ、続きますが、ここで引用は終了します。)
Drive to Tax AIG Bonuses Slows
Wall Street Journal, A1
March 25, 2009
昨日CBS 60 minutes のオバマ大統領のインタビューを見ました。
(CBS 60 Minutes: President Barack Obama, Part One)
このインタビューでの一番最初の質問は、「AIGのボーナス支給に対する反応、怒りの高まりについて驚きましたか?」だったのですが、これについてのオバマ大統領の答えは、「私も、チームも驚きませんでした。先週、一点強調しようとしていた事、そして、この先数ヶ月も同様に努めようとしている事、重要なことは経済で起きている問題の解決する事です。我々は怒りで政治を行うべきではない。人々が(職を得て)仕事に戻り、クレジットが元通りに機能するために必要な事、状況を把握して、我々は適切な判断をする様に努めなければなりません。私は、日々起こる出来事で自滅する訳にはいきません。私はこの国の経済が正常に機能する様に努める事に注力します。」(多少、意訳している部分があります。)
このくだりを聞いて、多分、オバマ大統領はボーナス課税案に対して、反対の姿勢をだなと思いました。仮に、両院を通過したとしても、拒否権を発動する可能性もある、と思っていましたが、今日のWSJの記事を見て、議会の方もかなり冷静になってきている様な印象を受けました。別の観点で言えば、オバマ大統領がうまく議会に対しても影響力を与えているとも言えるかと思います。
当然の事ですが、まだ、これでこの件は収まった訳ではありませんが、方向性は見えてきた気がします。
オバマ大統領は、今週の金曜日にファイナンス企業の経営者と会って話をする予定との事です。これもかなり重要なイベントと思われます。これらの件については、引き続き見て行きたいと思います。何か、注目すべきニュース等があれば、エントリーする予定です。
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